色のお話:最古の色、土色系第二段
今日のお話の中には、ネアンデルタール人も出て来ます。どれだけ古いんだってことがよく分かりますよね。人には色というものがとても大事だったのでしょうか?それこそ自分でそれらの色を顔料にできることが、何か大切なことだったのでしょう。子供の頃にクレパスの色がたくさんあると嬉しくなるように、顔料と人との関係はものすごく古いものなのですね。人は何かを創り出すことを止めることはできません。これらの色のお話が何か作品の制作の役に立つことを願います。
レッド・オキサイド
すべての可能性から、この色は人が使った顔料の中で最も古い顔料と言えます。考古学上の根拠から、レッド・オキサイドは、これまでに見つかった顔料の中で一番古い顔料である事がわかります。その根拠の中には、ネアンデルタール人(旧石器時代に欧州にいた人類)が、亡くなった人の遺体にふりかけ、人の皮膚が生存していたように見せかけていたと言われています。人が使用したという名残が残っている一番古いものは、六万年前のもので、サウス・アフリカのピナクル・ポイントにある洞窟で発見されています。しかし、そこには論争を呼ぶ発掘物があり、それは、十万年前のものであるとされています。レッド・オキサイドの顔料の一番古い使用方法は、川沿いなどで発見された粘土状で、化石として現代まで残っている可能性はありませんが、人の体に描かれたものであると推測されています。サウス・アフリカの洞窟の中で発見されたものの中に、貝殻に詰められた赤の顔料が発見されているのですが、それらが何に使われたのかはわかっていません。可能性としては、化粧、用具や武器のデコレーション、または儀式的なものでの色付けなどに使われたと思われますが、実際のところはわかりません。
洞窟の壁画で残っている一番古いものは、フランスと、ナミビア、そしてオーストラリアにあり、3万年前のものです。これらの全てにおいて、大部分のエリアはレッド・オキサイドで描かれており、その他にイエローやブラウン・オキサイドと、木炭のブラックが使われています。その他、多くの発見されている壁画も、レッド・オキサイドが大きな範囲に使われており、一色のみの壁画の場合には常にレッド・オキサイドで描かれています。これらからもわかるように、アーティストにとってレッド・オキサイドは重要な色であったと思われます。おそらくこの色が血の色に似ており、不思議な特性を持っているからでしょう。イエロー・オキサイドやレッド・オキサイドは、過去の全ての文明において唯一使われている色で、両方とも未だに使われる色であることから、アーティストが最も使っている色と言えるでしょう。
歴史的に見て、レッド・オキサイドの色は、不透明性や色味が顔料の取れる場所によって様々であるため、決まっていませんでしたが、ルネッサンス時代に標準化されました。それはとても不透明なレッド・アイアン・オキサイドで、ポッツオーリで発見されたものが特に貴重なものとされました。ポッツオーリのレッド・オキサイドは、珍しい特性を持っており、乾燥するとセメントのように硬化するため、漆喰の壁やモルタルを作る原料として使われ、建築材料として、そして芸術的に重要な顔料でした。ローマ人はこの色を大規模に使い、シノピアと呼ばれていました。ルネッサンスになって、その名前はシノパーと呼ばれ、16世紀にはポッツオーリ・レッドとして知られるようになりました。この名称は今でもたまに使われますが、シノパーは、歴史的な出典以外に色の名前としては使われなくなりました。
レッド・オキサイドは、カドミウム・レッド・ミディアムと比べると鈍い赤色ですが、このような素朴な色が最適であるという時代がたくさんありました。たくさんのアーティスト達が、素朴な色のパレットにコバルト・ブルー、マーズ・ブラック、そしてチタン・ホワイト等の色を使い、その落ちついた色のパレットの中では、レッド・オキサイドがとても明るい赤になります。そして、科学的にも視覚的にも、自然の土や岩などの色にとてもよく似ており、レッド・オキサイドを赤として使うのは賢明なことでした。レッド・オキサイドを使って作られたピンクは、優しいピンク色でバイオレットやオレンジに関しては、柔らかく素朴な色になります。より純粋な赤みである事と、混色の際の多様性の高さにもかかわらず、レッド・オキシドは、バーント・シェンナより使われる確率が低いということはとても興味深いことです。チタン・ホワイトと混ぜて作られたピンクは、とても美しく柔らかい色です。アンブリーチ・チタンを使うと、少し暖かみを帯びたもっと柔らかな色になります。そして、例えばバーント・シェンナがなかった場合、レッド・オキサイドに濃いイエロー、例えばイエロー・ディープなどを混ぜることでバーント・シェンナに近い色を作ることができます。レッド・オキサイドは、コバルト・ブルーやウルトラマリンと混ぜて薄暗い藤色を作ることができ、明るめにするには、オーストラリアン・スカイ・ブルーを混ぜることで作れます。この世界一古い色は、最も注目すべき色なのです。
トランスパレント・レッド・オキサイド
トランスパレント・レッド・オキサイドは、「素晴らしい!」と感嘆の声をあげたくなる色です。「絶世の美女」という言葉をもし色に使うことができるのならば、この言葉がぴったりの色です。トランスパレント・レッド・オキサイドのマストーンは、とてもリッチでバーント・シェンナのようですが、赤みが強く茶色の色味は、バーント・シェンナに比べて少なくなります。しかし、この色の本当の魅力はアンダートーン(下色)にあります。これは輝かしいオレンジ・レッドで、すべてのアース・カラーの中で最も美しい、と言えるのではないでしょうか。この美しさは透明度から来ています。この純度の自然なレッド・オキサイドの顔料で、このような透明度を出す事は、今までには不可能な事でした。透明度は、顔料の粒子サイズに左右されます。赤が作られる製造段階では、通常色が濃くなるにつれて、粒子のサイズは徐々に拡大していきます。そのため、特別な方法で正確な色ができるまでの行程中に、この粒子のサイズを小さいまま保たなければなりません。この方法が研究されたのは、車産業の色開発の中で、何年もの間直射日光に耐えられる耐光性に最も優れた新しい色の必要性からでした。アーティストたちが美しい顔料を使いたいと願っていても、顔料の産業の中では、アーティスト用の絵の具は非常に小さな一部分の産業でしかありません。印刷産業、建築用絵の具、プラスチック産業、繊維産業、そして車産業と顔料を使用する産業が19世紀半ばから拡大されていきました。しかしそのおかげで、トランスパレント・レッド・オキサイドなどの素晴らしい顔料の研究開発に多大な資金がつぎ込まれたのですから、文句は言えません。
トランスパレント・レッド・オキサイドは、バーント・シェンナの代わりにもなる完璧な色相ですが、十分に違いのある2色ですので、両方あることが望ましいとされます。バーント・シェンナには、とても綺麗なトランスパレント・レッド・オキサイドの輝きはありませんが、広い範囲を魅力的な茶色系のマストーンで塗る風景画などに役に立ちます。ただ、白いキャンバスに混色をせずに2色を塗って比べると、違いは明白です。バーント・シェンナに比べて、アンダートーンは明るくクリーンにそして本当のオレンジ・レッドの下色を持っています。例えば、チタン・ホワイトやアンブリーチ・チタンなどの不透明色との混色では、バーント・シェンナに似た作用になりますが、透明度の高い顔料、例えば、プライマリー・レッドなどと混ぜると、とてもクリーンで透明度の高い、まるで宝石のような色のアンダートーンが作れます。アーティストは美しい色に惹かれがちですが、トランスパレント・レッド・オキサイドは、綺麗な顔を持っているだけではありません。バーント・シェンナのように肌の色を作る混色に使うと、温かみのある優しい色を作り出し、風景画でアース・カラーの混色の際も、それらの色を和らげる効果があります。グリーンを柔らかくする時には、透明度の高い、マティス・エメラルドやフタロ・グリーンと混ぜると、このトランスパレント・レッド・オキサイドが持つ透明度が良く働き、とても美しく保存性の高い色が作れます。
マーズ・バイオレット
マーズ・バイオレットは、20世紀前半に作られた暗めバイオレット色の、人工赤色顔料に付けられた近代の名称です。しかし、天然のこの色の顔料は古代から使われていた色でした。
このバイオレット色を出す粘土は、 天然のアイアン・オキサイドに比べてとても珍しいものでした。そして、古代ギリシャ・ローマの時代になるまで見られませんでした。ラテン語の名称はカプトモルトゥムで、その意味は「死人の頭」と訳され、これは死体の血の色に似ていることからこの名称がつけられたと思われます。この気味の悪い名称に反して、この顔料は、アースカラーの中でバイオレットの範囲で使われる、とても好まれる色でした。
ルネッサンスから20世紀までの間、この色はヴェネチアン・レッドよりも暗く、濃い 赤色系アイアン・オキサイドの仲間に加えられていました。この深いバイオレット色の顔料は、その珍しさのために、人工の顔料が市場に出回り、使用される度合いが広がっていった20世紀までは、とても少ない役割しか果たしていませんでした。レッド・オキサイドに比べて、まだ使われる度合いは少ないですが、このユニークな色は、アーティストにとってとても役に立つ色であると証明されています。
まず、この色は、とても自然な唇の色に使えます。これに関しては他のどの顔料にも勝る仕事をします。そして、バイオレット寄りのアースカラーを作ることにも長けており、これは光の状況によって現れる人の肌の色に最適です。
素朴な自然色のこのバイオレットは、驚くことに風景画にもとても役に立つ色です。五月の花々に見られる柔らかで薄暗い色や、ムードのある夕方の風景で、赤みを帯びたバイオレットの大地などに理想的です。ウルトラマリンやホワイトと混ぜて、大気の現象で自然界によく見られる、くすんだ藤色を作り出します。マーズ・バイオレットは保存性が非常に高いので、どのようなテクニックを使う時にも自信が持てます。現実的に見てマーズ・バイオレットは、バイオレットを作ることに飛び抜けて優れた特性を持っています。アーティストの中で、アースカラーとコバルト・ブルー、チタン・ホワイトそしてマーズ・ブラックのパレットを使う場合、マーズ・バイオレットは一番重要な色になってきます。これはバイオレットという色は自然界で最もよく見られる色だからです。マーズ・バイオレットにコバルト・ブルーを混ぜて深みのあるロイヤル・パープルを作り、そこにチタン・ホワイトを混ぜると柔らかで無限に広がる藤色が作れます。温かみのある赤味がかったバイオレットを作るには、ソフト・パステルのようなナポリ・イエロー・ライトや、パーマネント・ライト・バイオレットを混ぜます。とても簡単に聞こえますが、オーストラリアの有名なアーティスト、ハンズ・ヘイセンの油彩の風景画や、水彩画を使った遠くの丘などに使われている色、無数の柔らかなバイオレット色を再現するのに十分なのです。
これらのアーティストは絵に詩的な表現を取り入れており、マーズ・バイオレットはこの詩的表現を繊細に行う能力があります。
ロー・アンバー
ロー・アンバーは、ラテン用語で「アンブラ」(影)の名前から派生しており、イタリアの中央地区の山岳ウンブリア州が初めの産地でした。ただしこの粘土のタイプは、ありふれたもので、世界各地で発見できます。高い品質のアーティスト用絵の具の顔料は、キプロスが最も重要な産地です。これは最高品質のアンバーとされており、イエロー・オキサイドとマンガン・オキサイドの含有量、そしてこの二つの混合が作り出す緑がかったトーンがアーティストに好まれるものであるからです。おそらくトルコでは、歴史的に見てもリッチでエキゾチックな色と関連があり、さらに国名もトルコ石から派生していることからもわかります。キプロスのアンバーは、顔料業界でよく「ターキッシュ(トルコ)」と呼ばれています。ロー・アンバーは、アーティストたちによって、寒色系の暗いブラウンとして使われていますが、ほとんどのロー・アンバーはバーント・アンバーの原料になってしまいます。
ロー・アンバーとバーント・アンバーの暗いブラウンの色味は、部分的にレッド・アイアン・オキサイドとマンガン・オキサイドの不純物によるものです。マンガンが暗いブラウンの色味を作り出します。アフリカやオーストラリアの古代壁画には、使われていないのですが、ロー・アンバーは、フランスの初期の洞窟壁画の主要な部分に使われています。それらは、2万年以上使われていたとみられています。ラスコーの有名なバイソンや馬は、約1万6千年前のもので、ロー・アンバーとレッド・オキサイドを使って美しく描写されています。ロー・アンバーのトーンが、これらの絵の中の動物たちを覆う自然な色であるために、現実味を感じる事に貢献しています。ほとんどの古代の洞窟壁画は、現実的というよりも、とても図式的で、色や形は精神的なものや文化的なものを表していました。ラスコーの壁画でもこのように使われているものもありましたが、大きな動物になると写実的に描写されており、ほとんどモダンと呼べるようなもので、これらの動物画の正確さを求めることで、ブラウンの顔料の必要性が広がりました。このことは重要な見識で、この後世界中の洞窟壁画でロー・アンバーの顔料が見られるようになりました。これは、自然発生したことなのか、または文化的な考えが広い範囲で伝わっていたのかを考えるととても興味深いことです。さらに興味深いことは、この色の人気がなくなっていくことです。その例として、古代のエジプトでは、使われていなかったようです。ただ、ルネッサンス時代には基本の色として広く使われていました。
ルネッサンスの後、ブラウンの時代がやってきて、これらの色の使用はとても多くなりました。印象派が出てきて、ブラウンの使用頻度が今日の状態に落ち着くことになります。新世紀になってもその人気はロー・シェンナと同じく保持し続け、これらの2色のみが未だ古代に使われたのと同じように、自然の顔料を人工のものに取って代わられることなく使われています。
暗いブラウンは、自然界の中にたくさん見られ、特に影などには多く発見できます。それらは暖系の色の場合もあり、その場合バーント・シェンナが一番目の選択になりますが、寒色系のブラウンが必要になると、ロー・アンバーの方が適しています。そして暗い色を混色で作る場合にも実力を発揮する色で、フタロ・グリーンと混ぜてフッカーズ・グリーンの色を作ったり、透明度の高いクリムゾン系の色、例えばマティス・ローズ・マッダーやブリリアント・アリザリンと混ぜてバーガンディーの色を作ったりします。サザン・オーシャン・ブルーと混ぜるとブラックが、そしてイエロー・オキサイドと混ぜることで色幅の広い風景画で使用頻度のとても高いブラウンが作れます。
バーント・アンバー
バーント・アンバーは、ルネッサンス時代のイタリアで開発されたもので、レオナルド・ダ・ビンチの頃には、すでに今日のような基本の色となっていました。チェンニーニの書いた、日本語訳にもなっている「絵画術の書」(原本は1437年)の色のことについて書かれている部分では、赤や黄色の土の事が書かれており、バーント・アンバーやバーント・シェンナの事には触れていません。しかし、50年後、これらの色は基本の色となり、ほとんどの絵画で見られる色で、忘れるはずのない色となっていました。
ロー・アンバーは、世界各国色々なところで発見できるありふれた色で、このバーントのバージョン(焼かれた状態)が世界のどこで発見されてもおかしい状況だったのですが、それはイタリアで起こりました。おそらく、バーント・シェンナの開発の結果を得てのことと思われます。ロー・シェンナはロー・アンバーより一般的ではない鉱物で、イタリアのシェンナ近くが何世紀もの間、主要な鉱床とされていました。
顔料の製造会社が、ロー・シェンナを炉で加熱したことで美しいバーント・シェンナの顔料を作りだしたのはその地で、今日でもまだ使われています。その際、他の顔料でこの方法を試してみることは、理にかなっておりロー・アンバーから作られた濃いブラウン、バーント・アンバーが生まれる事になりました。ロー・アンバーは、寒系の色で、アーティストたちはすぐに、この温かみがあるチョコレートのようなバーント・アンバーが、人物などの影の色に向いている事を発見しました。この色は自然な人物の温かみを表すことに向いていました。そのため、すぐに人気の色となり、現在でもこれだけたくさんの色がある中で、バーント・アンバーを使わないアーティストは少ないことでしょう。
何世紀もの間、この色は限られた範囲の色合いで作られていました。アーティストが使える基本となった色は、家の外壁内壁用の絵の具でしたが、のちに自動車産業で使われるようになって幅の広い色味が必要とされ、今日ではその幅は暖系から寒系までと広がりました。そのためアーティストが使うバーント・アンバーも幅の広さを持つことになりました。マティスのバーント・アンバーは、とてもリッチで暖かいチョコレートのような色です。
バーント・アンバーは、他の色を暗くする混色に向いており、フタロ・グリーンやクロミウム・グリーン・オキサイドと混ぜることで、とても深いそして素朴なグリーンを作り出し、赤系の色と混ぜることで、バーガンディの色を作り出します。特に透明度の高い赤、例えばプライマリー・レッドやマティス・ローズ・マッダーと混ぜるとうまく働きます。これらの赤はバーント・アンバーに温かみを与え、肌の影の色を作るのに、茶色が多くなることを避けながら良い影を作り出しあます。ウルトラマリン・ブルーを混ぜると、濃いバーガンディ色を作りとてもリッチで土のような影を風景画の中に作り出し、一番暗い影の中のレッドやパープルを含んだ色のためにとても役に立ちます。
人物の髪の毛を描く際には、バーント・アンバーがないパレットは稀です。金髪の場合でもその影には深いバーント・アンバーを見ることができ、暗めの髪色の場合はよくウルトラマリン・ブルーをバーント・アンバーに混ぜて、黒に近い影を作り出します。さらにバーント・アンバーはとても興味深い黒をフタロ・グリーンと混ぜることで作り出します。
バーント・アンバーとフタロ・グリーンを持っていれば、黒は必要ありません。マティス・バーント・アンバーのストラクチャーは、深く暗いバーント・アンバーのため、特に黒を作るのにも役に立ちます。
トランスパレント・アンバー
トランスパレント・アンバーもまた感嘆を上げるような色なのです。アース・カラーは、1000年もの間あまり変わらない色なのですが、アーティスト達は、アース・カラーを古代の色と思いがちです。しかしながら、その状況はもっと複雑なのです。
現在販売されている絵の具の、ロー・シェンナとロー・アンバーは、18000年前のアーティストによってフランスの洞窟で使われていた色、ロー・シェンナとロー・アンバーとほとんど変わりません。レッド・オキサイドとイエロー・オキサイドは、合成で作られたものによって、20世紀に純度が高められました。しかし、自然のものと、合成のものの差は、本当に小さな違いなのです。一方、トランスパレント・アンバーは、本当に違うのです。
自然の顔料で、トランスパレント・アンバーのような見た目と作用をするものはありません。これは完全に近代の化学産業の発明品で、それは車産業やその他の産業で新しい色を求められたための開発でした。車は直射日光に10年以上もさらされるものですので、 耐光性が高い絵の具が求められます。トランスパレント・レッド・オキサイドとトランスパレント・イエロー・オキサイドは、これらの色や美しさ、耐光性の条件を満たしていた為、理にかなった次のステップとして、トランスパレント・アイアン・オキサイドで暗いブラウンの開発が行われました。
合成されたトランスパレント・アイアン・オキサイドは、自然の土と比べると透明度を増しとても違った反応をします。自然の・アイアン・オキサイドには、不揃いの顔料粒子を含んでおり、不透明なのが自然です。しかし、自然のイエロー・オーカーは、最低20%のイエロー・アイアン・オキサイドを含むことができます。これらの色の透明度はトランスパレント・イエロー・オキサイドと比べて透明絵の具ではありませんでしたが、半透明と呼ばれていました。何故なら母岩にイエロー・アイアン・オキサイドが入っていたからです。これはトランスパレント・シリケートでした。その反面合成のオキサイドは、とても純粋でした。透明度は顔料の粒子のサイズで決まるからです。粒子がとても小さいと透明になるのです。そのためトランスパレント・アイアン・オキサイドはとても美しく、アーティストに多大な利点を与えます。
アーティスト達が美しい色を熱愛するように、色の使いやすさはアーティストの絵の具箱に入る色かどうかを決定します。トランスパレント・アンバーの場合、その使いやすさのため、バーント・アンバーに変わる可能性を持っています。この色は多くの場合、オリジナルのバンダイク・ブラウンのような作用があります。ルーベンスがバンダイク・ブラウンを使っていた時のように。バンダイクという名前がもっと不透明な絵の具に引き継がれたことと違い、オリジナルは、とても透明度が高くルーベンスが特に好んだ特徴でした。残念なことに、透明度を得るのは高価で、自然色の原料の保存性は、ルーベンスが望んでいたであろうと思われるほどではありませんでした。彼はきっと現在のトランスパレント・アンバーの透明度を抱きしめたくなることでしょう。何故なら彼の望んだ透明度と保存性を持ったアース・カラーだからです。
暗い透明なブラウンの最も重要な使用方法の一つは、薄いロー・アンバーの下塗りの上にトーンのレイヤーをつけていくことです。昔の巨匠の描いた暗い部分は、薄い透明絵の具で、中間や明るいものほど不透明で厚塗りになっていき、一番明るいハイライト部分は、インパストになっていきます。
油絵の具の画家たちは、これらのテクニックを、何層ものレイヤーを繰り返すため油絵の具の乾燥にそれぞれ時間がかりることから、何百年もの間放置しています。アクリル絵の具は乾燥が早いため、これらの昔のテクニックを油絵の具と比べると、時間をかけずに再現することが可能です。アクリル絵の具は色のレイヤーで良い成果を得られます。何故なら油絵の具よりも濃度が自然に低くなるためです。そのため何層ものレイヤーで色の豊かさと深みを表すことができます。
トランスパレント・アンバーは、バーント・アンバーのように他の色を暗くすることに使うことができます。この色の透明度のため混色された色のアンダートーンはとても美しいものになります。
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