色のお話:黄色(オレンジに向かって〜)



黄色:中間からオレンジに向かって

プライマリー・イエローは、中間の黄色です。理論上では原色と、黒、白でどのような色も作れるのですが、黄色との中にも、色々な黄色がありますよね。この黄色後編では、理論上の原色に最も近いプライマリー・イエローからオレンジ系のイエローへのご紹介です。


プライマリー・イエロー 


理論上は、三原色を使えばどのような色も混ぜることができます。しかし実際には、顔料の種類によって様々でそれほど簡単なことではありません。そのため私たちは三原色以外の色も使います。これは原色があまり使い物にならないということではありません。少ない色で幅の広い色作りをする際には、マティス・プライマリー・イエロー、レッド、ブルーとブラック、ホワイトから始める事をお勧めします。
この原色(プライマリー・カラー)は、学校での授業などで、混色や色の理論について勉強する際にとても役に立つ色です。または、点描画法を試してみたいアーティストに取ってもこの色が役に立ちます。何故なら純粋な原色がこの画法に向いているからです。

原色のスペクトルに一致する単一顔料がないため、マティスではイエローにホワイトを混ぜてこの色を作っています。この色はとても明るく、純粋な黄色で混色の際に幅の広い長所を出す色で、とても美しくお手頃の価格に収まっています。あなたの中に潜んでいるジョージ・スーらを呼び起こすには十分です。




イエロー・ミッド(アゾ)


近年、PY74の顔料、アリライドイエローは、黄色の中間色の基準となりました。アゾやアリライドという名前は、レーキ顔料に関係した名前としてよく使われます。現代の高性能な有機顔料の産業で、重要な要素を形作っています。この色の存在がなかった場合、車やプラスティックの色の選択支はとても少なく、アーティストにとっても色の選択がかなり少なくなってしまいます。イエロー・ミッド・アゾは、少し緑よりのカドミウム・イエロー・ミディアムで、カドミウム系の色によく似ています。ではどうしてこのよく似た二つの顔料が必要になるのでしょうか?それには、三つの理由があります。金額、色の透明度、鮮明度です。
イエロー・ミッド・アゾはカドミウムの色に比べて、コストがかなり安くなるため、アーティストにとっては、予算的に厳しい場合とても助かる色になります。そして、この顔料は耐光性もATSM Iと高く、優秀な顔料で有ると共に手頃な料金を実現できてきます。これは多くのアーティストにとってとても重要な点です。
次に、カドミウム・イエロー・ミディアムの代わりにこの色を使う理由は、透明度にあります。不透明度やカバー力の高さは必要ではありますが、その反面、透明な効果が必要とされる場合もあります。そして、この色はカドミウム系の色より非常に高い着色効果があり、この色の鮮明さは三つ目の理由となります。混色をする際に鮮明で、綺麗な色を作り出すことができますので、この顔料の方が混色にふさわしいと言えます。


カドミウム・イエロー・ミディアム


明るい黄色の数世紀に先立つ問題を考慮すると、カドミウム・イエローの人気は驚くほどゆっくり進みました。色々な国で、いつこの色が手に入るようになったかを見てみると、とてもゆっくり、でも確実に世界に広がっていった事がわかります。1817年に開発され、1820年にフランスで初めてアーティスト・カラーとして使われました。1829年にはドイツ、1842年にはアメリカ、そしてイギリスでは1846年に初めて使われました。

この導入は比較的にゆっくりです。この浸透の遅さには、クロム・イエローの存在がありました。クロム・イエローは、持続性に劣る評判がありましたが、絵の具の製造会社が競って自社のクロム・イエローは他とは違う秘密のレシピで作られていると、アーティストたちを納得させていたのです。クロム・イエローは、チューブに入った安価で魅力的なゴールデン・イエローなのに対し、カドミウム・イエローは高価なために、クロム・イエローよりも良い絵の具であることを、気付かれなかったのです。

初めて有名な画家がカドミウム・イエローを使った記録は、モネによるもので、秋に黄金色になっている川沿いの柳の木を、ほとんどチューブから出した色で塗られたものでした。私はこの絵を間近で見ることがありましたが、この厚塗りのカドミウム・イエローの美しさはとても魅力的でした。持続性に富むカドミウム・イエローは、このモネの絵も何世紀にもわたって次の世代まで美しさ、鮮明さを変えることはありません。

今日では、カドミウム・イエローは色々な明暗のものが作られています。マティスのカドミウム・イエロー・ミディアムは、1820年に初めてパリで使われた色にとても近いものです。この色は、赤と混ぜてオレンジを作るのにとても使い勝手がいいのです。ゴールデン・イエローは、美しく明るい花や、成熟した麦などの日常の自然の中で見つける事のできる色です。そして、オーカー(黄土色)に混ぜて日の光が当たる効果を色々な自然の描写に使うことができる色です。この信頼できる色を絵の具箱に入れていないアーティストたちが非常に少ないことには、そうである良い理由があるからです。


オーレオリン・イエロー


マティス・シリーズにオーレオリン・イエローが加わることを知った時、私はとてもワクワクしました。この色は、ぱっと見た目にはそのようには見えませんが、黄色の絵の具の中でも桁外れに美しい色です。1830年にアーティスト・カラーとして発売をしてみよう、と思った人が出てくるまで、 20年以上も前から実験室の戸棚にしまい込まれていた理由がわかるような気がします。水彩画家たちは、水を加えることでその色の特別な秘密を発見し、すぐにオーレオリン・イエローに恋に落ちてしまいました。この色は、チューブから出てきたそのままの色(マストーン)は、ガサガサで冴えない色(少し日本のからし色にも似ている色)のように見えたのですが、水で薄めることで変化が現れます。
これは、オーレオリンの珍しい特質で、水で薄めた薄塗りの時や、アンダートーンで顔料の美しさが明らかにされます。水彩画家たちはそのとても明るく鮮明なアンダートーンに興味を抱きましたが、アクリル絵の具画家たちは、アンダートーンと、マストーン(マストーンとは下の色が見えないように色を塗ることで、アンダートーンは薄く伸ばした時の色を表します)の美しい効果の違いを活用することができます。
この色は、断定的に説明をするには少々難しい色です。なぜなら、この色は二つの色が一つになっていると言っても過言ではないからです。ただ、ここで概要だけは注記したいと思います。まず始めに、科学的にはコバルトの化合物で、これはコバルト・ブルーほどの耐光性があるわけではありませんが、アーティストが手に入れることのできる色の中では、耐光性は高くなります。次に、とても美しく、キレイで、透明度の高いアンダートーンを作れる無機物の色は、グレージング・テクニック(グラッシ)に最適です。残念なことにこの顔料はとても高価な顔料ですが、他には見られないこの顔料の特質は、本物を作る上では少しの投資だと思います。


イエロー・ディープ


イエロー・ディープは、とてもリッチな黄金色と言えるイエローで、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホのひまわりを思い出させる色です。もしも彼が生きていた時代にこの色が手に入ったなら、彼はこの色の素晴らしさに恋に落ちて、現在の私たちが彼の素晴らしひまわりの作品をもっと楽しむことになっていたでしょう。ゴッホは黄金色のクローム・イエローを使っていました。この色はとても有毒で、他の色との接触で茶色に変色してしまうこともありました。しかし、無害で耐光性に高いイエロー・ディープには、そのような問題はありません。この顔料は、ジアリライドと呼ばれる顔料で、色の分子中の炭素と水素の原子が二つ続きになっていることを表します。これによって色を変え、耐光性も高めます。
これらの色は1960年代に入手が可能になりました。それは車産業で使われる新しい色の研究に多大な投資があったからです。アーティストにとって、これは本当にありがたいことです。何故なら、車に使用される色は、強烈な屋外の環境に耐えられるように、耐光性に優れていなければなりません。このため、アーティストにとっては素晴らしい耐光性を持った顔料が手に入ることになります。イエロー・ディープは花や麦、平野や太陽、またはゴッホに影響を受けた作品などにその恩恵が受けられます。

イソ・イエロー


イソ・イエローは、イソインドリンの省略名で、この顔料の正式化学名の省略になっています。これはバット染料の顔料になります。バット染料とは、それらがバット(浅いそこの平らな四角形の容器)で作られたことから名付けられましたが、バット染料は耐光性の高さや、良質な特性を持っているという高い評判があります。これらの色は、とても高い染色能力を持っており、混ざり気の無いきれいな色です。
イエローと呼ばれているにもかかわらず、このイエローは赤色に寄った黄色で、オレンジにとても近い位置にあります。この色は異国の文明を思い出させる色といってもいいでしょう。そして、アンリ・ルソーがジャングルの中にいるトラの絵の色に使った色にとても似ています。さらに、クレーの水彩画の中にも見られる色で、仏教僧が纏っているガウンのサフラン色を思い起こします。そして夕焼けやマリーゴールドの花などにも見られる色です。
この色は、とても美しく、刺激を与えてくれる色です。赤と混ぜることで、ブリリアント・スカーレットを作り出したり、いろいろな黄色と混ぜることで、自然界で見つかる黄色を作ったり、バーント・シェンナと混ぜて、砂漠などに見られるアース・カラー(土を思わせる色)を作り出します。この絵の具を手にする理由はたくさんあり、この並外れた美しさを探求したいと思うことでしょう。












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