絵の具の色のお話(黄色ー淡い〜明るめ)
黄色について(淡い〜明るめ)
いきなり明るくなりました。黄色は本当に輝くとても強い色です。太陽、ひまわりなどの花の色、果物、夕焼けや秋の紅葉などなど、自然に関連される力強い色のイメージがありますね。明るさをどんどん広げてくれるような、でも強さをコントロールするのが結構難しかったり、黄色と付き合うのは、楽しみでもあり、厄介であったりもします。色の三原色の黄色ですのでたくさんの色があります。今回は明るめの黄色のお話です。
ナポリ・イエローライト
古代の色、ナポリ・イエローライトは、バビロンの空中庭園の時代から使われ始めています。初めは火山の周りから集められた、火山の条件により自然発生した色でした。合成物質で作られ始めたのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの時代、ルネッサンスです。この顔料は、耐久性に富み、鉛白のように油絵の具の柔軟性を増加させる、とても好ましい性質を持っていました。残念ながらこの顔料は、よく知られている極めて有害な顔料である、と言う重大な問題も抱えていました。最近では、健康面の問題からこの顔料の代わりに、白に黄土を混ぜて、アーティストが愛してやまないやわらかい黄色の色を作っています。
マティスのナポリ・イエローライトは、無害のホワイト、オーカー、そしてイエロー・ディーブの顔料を混合して作られています。その色は、不透明で贅沢なクリーム色をし、色を明るくするための多用途性のおかげで、たくさんの人気を集めています。純粋な白を使って他の色を明るくする場合、使いすぎる事で、色の持続力を損失していきます。例えば、赤などは、白を加えることでピンクになってしまい、色味を変えてしまいます。そのため、賢いアーティストは、白を使って明るくするという手段は最後の頼み綱で、その代わりに色相環で近くにある明るい色を使って明るくし、その色の豊かさを維持します。そのため、ナポリ・イエローは、オーカーやイエロー、オレンジ、黄色味がかった赤の色味を明るくすることにとても扱いやすい色です。スカーレット・レッドにナポリ・イエローを混ぜると、とても綺麗なサーモンピンクになり、肌色や、日没の空などにとても役立つ色になります。青に混ぜると、多くの木、特に日の光が当たった郡葉の柔らかい緑になります。この多様性により、ナポリ・イエローは、アーティストの人気を1,000年以上集めているのです。
ニッケル・チタン
1960年代に始めて製造されたこの顔料は、新しい種類の高性能ミネラル顔料に属し、徐々にアーティストにとって重要な顔料の一つになっていきました。これはチタンの酸化物、ニッケル、アンティモニーを熱して作られています。この結果、作られた色は、半透明の鮮明で綺麗なレモンイエローになります。
この色は、古くからある顔料で同じ色調のイエローライト・ハンサなどの代替として、歓迎されました。イエローライト・ハンサは、特に水彩画の効果で、とても薄い色合いをつけたものは、色あせていく傾向にあります。これはとても重要で、このような透明度の高い黄色は、グレージングや水彩画の薄いひと塗りなどに非常によく使われている色だからです。このような場合、少々高額になってもニッケル・チタン・イエローの顔料を使う事は、それだけの価値があります。なぜならこの顔料は、薄く塗られた色もその色を永続的に保持するからです。
これは美術の歴史の中でも初めて、透明度の高いレモンイエローの色調で、薄塗りをした際とても高い度合いで色の永続性を可能にしました。レモンイエローは常に花などの絵を描くときとても重要な色です。さらに、視覚上の効果として、混色し明るいライム・グリーン、グリーン寄りのイエローを日光の当たっている郡葉のように、または人間の作った物質、車や家などにも非常によく使う色味です。とても繊細で透明感のあるライムグリーを作るには、ニッケル・チタンにマティス・エメラルドを混ぜるか、セルリアン・ブルーを混ぜることで、濃度を高めることができます。
イエローライト・ハンザ
何世紀もの間、アーティストは信頼できる透明度のあるイエロー・ライトの色を手に入れる事が出来ませんでした。ベリー系とその他の植物を混ぜて作られた色は、すべて数年で色褪せてしまうと云う致命的な欠陥がありました。これは非常に苛立たしいものでした。なぜなら、この色はとても使い勝手のいいものだったからです。1911年、ドイツのケミストが、ハンザ・イエローとして知られる明るいレモン・イエローのアリライド・レーキ顔料 を開発しました。
ハンザという名前は、中世の言葉、ハンザ同盟(The Hanseatic League)に由来し、この長い歴史を持つ信頼できる工業製品という響きを持っている名前があてがわれたと思われています。今まで実験室で作られた質の悪い色と識別するのにも役立ちました。これは印刷業界用のインクとして開発されたのですが、アーティスト絵の具の製造会社もすぐに使用し始めました。
ハンザ・イエローは、初めての高品質の有機顔料として成功し、そこから今日アーティストたちが使っている耐光性に優れた赤や黄色の製造につながりました。最古の有機顔料として広くプロのアーティスト絵の具として使われているこの顔料は、その他の顔料の祖父の位置にいると言っても過言ではありません。
イエローライト・ハンザは、明るい寒色の透明度ある綺麗なイエローで、鮮明な薄黄緑の混色に最適です。
この透明度は、グレージング・テクニック(薄塗り)にも効果的で、水彩画の効果を得る事が出来ます。安価であるというのもアーティストにとって助かる要因の一つです。
ビスマス・イエロー
数年前にビスマス・イエローが製品として発表された時には、カドミウムに変わって、もっと安全な顔料と興奮させられました。なぜなら、カドミウムには、発がん性物質が含まれていると懸念されており、将来的には使用を禁止される恐れがあるからです。ビスマス・イエローは安全なだけではなく、不透明度もカドミウムに似ているという利点があります。とても綺麗な寒色のイエロー・ライトで、カドミウム・イエロー・ライトにとてもよく似ています。
そして、カドミウムの一族のように耐光性にも優れています。カドミウムは、生来暖色のイエローで、寒色の淡緑黄色にするために、硫化亜鉛を凝結させます。亜鉛は、他のカドミウムの顔料に比べて、耐光性を下げる働きがあります。ビスマス・イエローは、純粋なカドミウム・イエローと同じもしくはそれ以上の耐光性があり、カドミウム・イエロー・ライトと比べると、優れた耐光性を示します。
暖色で黄金のイエローの色が好まれる中、寒色系の明るいイエローの方がアーティストにとって使い勝手はいいのです。暖色系のイエローはオレンジを作る際にとても役に立ちますが、寒色系のイエローは緑を作るのに役立ちます。そしてこの世の中には、自然のあらゆる緑があふれており、作品作りの中で、この寒色系のイエローが役立つことの方が多いのです。もしも私が明るいイエローを選ばなければならないのなら、不透明度、永続性、多用途性、そして混色の特性からビスマス・イエローを選ぶことでしょう。
カドミウム・イエローライト
カドミウム・イエローが19世紀に人気を集めた際に、明るめ暗めの色の製造が可能であるかを問われることは自然なことでした。それまでに人気のあった色はジンク・イエローでしたが、信頼性に問題のある色でもありました。化学者たちは、これらの化合物が化学的に似ていることから混合が可能であると気がつきました。ジンクの硫化物は、カドミウム硫化物のおかげで保存性の信頼を上げ、カドミウム は、ジンク硫化物のおかげで淡い黄色を作り出すことができました。
これはとても美しいサクラソウの黄色で、保存性と不透明度を上げました。カドミウム・イエローに比べると、この淡いイエローの中のジンクの構成要素が、 耐光性を少し低くする結果になりましたが、この色の保存性は他の顔料よりも高いものです。そして、色味はルネッサンス時代やマニエリスムの時期に使われた、(巨匠たちの黄色)鉛すず黄色にとてもよく似た色です。この色は、その頃に唯一信頼の置ける明るい黄色として巨匠たちに使われました。
カドミウム・イエロー・ライトは、プライマリー・イエローに近く、混色で幅の広い色作りをします。自然界ではオーカーやブラウン色が多く、緑は暗いオリーブ・グリーンから明るいイエロー・グリーンまで、陽の光が群葉を撫でるようにたくさんの緑があります。カドミウム・イエロー・ライトは、土の色から最も明るいグリーンまで、このように幅の広い色作りに理想的な色になります。
#デリバン #黄色 #好きな色 #色のお話 #アクリル絵の具
www.Matisse.com.au
www.Matisse.com.au
コメント
コメントを投稿