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アルメニアの色

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世界の天然顔料シリーズ   自然や地理的な美しさ、素敵な物語や昔話を重視しているアルメニアは、世界で最もユニークで美しい顔料の産地でもあります。   アルメニアは、ヨーロッパの南東端、ロシアと中東の間に位置する内陸国です。美術の観点から見ると、アルメニアでは、宗教的なテーマや図解書などに寄せられた輝かしい写本やミニチュアで知られています。 多くの寺院や僧院の壁には、動物や植物、宗教的な日常生活を描いた絵が飾られているアルメニアの建築も又、彼らの芸術の発展に欠かせない役割を果たしていました。 アルメニア・ボーレ この色は、バイオレットのヒントを含んだ、柔らかく豊かな不透明感のあるブラウンです。 チタンホワイトと混ぜると、優しいローズテラコッタの色合いになります。マティスエメラルドと混ぜると、深みのあるボトルグリーンや面白いダークカラーになり、白を加えれば、穏やかな地衣類グリーンになります。 ロリ・レッドライト 別名 "ミイラのレンガ" アルメニアのミイラ・ブラウンレッドは、35%以上のヘマタイトを含む赤みを帯びた茶色の顔料です。 錆びた土の視覚的な要素をもたらす このリッチなブラウンは、豊かな黄金色のオレンジ色のアンダートーンを持っています。 マティス・インディゴを混ぜると、ブルーのスレートカラーから美しいエアフォース・グレーまで、チタン・ホワイトと混ぜると、ダスキー・モーヴのような色味になります。また、オーストラリアンスカイブルーと混ぜると、くすんだモーブ色になります。 グーガーク・チェリー チェリーレッドの色合いを持つ酸化鉄です。アルメニアのグーガルクにある鉄鉱床のヘマタイトです。それはかなりの色合いの強さと不透明度の光沢のある顔料です。 チタンホワイトと混ぜると、自然なピンク色の粘土色になります。豊かな深紅色のアンダートーンで、プライマリーブルーと混ぜると、深い海のブルーになります。 タバス・トランス・グリーン この独特の透明感のあるダークグリーンは、微妙な暖かみがあり、この色はヴェメアグリーンの釉薬を作るのに非常に便利です。 ミネラルブルーに混ぜると、霧に包まれた湿原のような柔らかなグリーンになります。 透明感のあるマティス・アンティーク・ホワイトに混ぜると、ベルベットのようなグリーンになります。 コタイク・オー...

色のお話:最古の色、土色、肌色系

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土色系、肌色系と書きましたが、今回の茶色系のグループには、肌色の素が含まれています。肌の色をミックスするときに元にすると使いやすい色です。肌色って何色だろうって考えたことありませんか?子供たちに聞くと本当にいろいろな色を作り出してきます。この色が同じ色という色も人それぞれ違ったりもします。人の肌は本当に微妙な上、人それぞれ、人種の違い、生活の違いなどなど、本当に様々で、その上に光種類の違いや当たり方の違いでまた変わってきますよね。本当に難しいけど、それがまた面白いということです。   ヴァンダイク・ブラウン ローアンバー・ディープ スキンドーン・ディープ スキントーン・ライト スキントーン・ミッド   ヴァンダイク・ブラウン   ヴァンダイク・ブラウンという名前の由来は、バロック期のフランドル出身の画家アンソニー・ヴァン・ダイクが初めて使った色という事からきていますが、本来はピーテル・パウル・ルーベンスがこの顔料を使った先駆者でした。アンソニー・ヴァン・ダイクはルーベンスの弟子で、この顔料を使う事が必要であると師匠から教わった事でしょう。 ヴァンダイク・ブラウンは、その頃には全く違う名前で呼ばれていました。それは、カッセル・アースやケルン・アンバーという名前で、その由来はこの顔料がドイツのケルン地区近辺で採掘されたからでした。この色は基本的にはロー・アンバーなのですが、褐炭の含有量が非常に多い顔料です。褐炭とは、茶色の石炭のことです。ルーベンスとアンソニー・ヴァン・ダイクによって使われたこのヴァンダイク・ブラウンは、時間とともに認められました。しかし、残念なことに顔料は品質にばらつきがあり、褐炭の部分が品質を下げる傾向になりました。信用のおけない絵の具屋が、アスファルトなどに使われる瀝青を上質のカッセル・アースの代わりに使ったことでさらなる問題になりました。この色はとても人気のあった色だったのですが、19世紀には信頼ができない色と評判が落ちました。そして暗いブラウンの流行が終わり、この色の販売も落ちてしまいました。ヴァンダイク・ブラウンの色は、その人気の頂点を過ぎてしまいましたが、アーティストが暗いブラウンを好むことから、無くなってしまったわけではありませんでした。バーント・アンバーが基本の暗いブラウンですが、その他の暗いブラウンで温かみ...

色のお話:最古の色、土色系第二段

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今日のお話の中には、ネアンデルタール人も出て来ます。どれだけ古いんだってことがよく分かりますよね。人には色というものがとても大事だったのでしょうか?それこそ自分でそれらの色を顔料にできることが、何か大切なことだったのでしょう。子供の頃にクレパスの色がたくさんあると嬉しくなるように、顔料と人との関係はものすごく古いものなのですね。人は何かを創り出すことを止めることはできません。これらの色のお話が何か作品の制作の役に立つことを願います。 レッドオキサイド トランスパレント・レッドオキサイド マーズ・バイオレット ローアンバー バーント・アンバー トランスパレント・アンバー レッド・オキサイド すべての可能性から、この色は人が使った顔料の中で最も古い顔料と言えます。考古学上の根拠から、レッド・オキサイドは、これまでに見つかった顔料の中で一番古い顔料である事がわかります。その根拠の中には、ネアンデルタール人(旧石器時代に欧州にいた人類)が、亡くなった人の遺体にふりかけ、人の皮膚が生存していたように見せかけていたと言われています。人が使用したという名残が残っている一番古いものは、六万年前のもので、サウス・アフリカのピナクル・ポイントにある洞窟で発見されています。しかし、そこには論争を呼ぶ発掘物があり、それは、十万年前のものであるとされています。レッド・オキサイドの顔料の一番古い使用方法は、川沿いなどで発見された粘土状で、化石として現代まで残っている可能性はありませんが、人の体に描かれたものであると推測されています。サウス・アフリカの洞窟の中で発見されたものの中に、貝殻に詰められた赤の顔料が発見されているのですが、それらが何に使われたのかはわかっていません。可能性としては、化粧、用具や武器のデコレーション、または儀式的なものでの色付けなどに使われたと思われますが、実際のところはわかりません。 洞窟の壁画で残っている一番古いものは、フランスと、ナミビア、そしてオーストラリアにあり、3万年前のものです。これらの全てにおいて、大部分のエリアはレッド・オキサイドで描かれており、その他にイエローやブラウン・オキサイドと、木炭のブラックが使われています。その他、多くの発見されている壁画も、レッド・オキサイドが大きな範囲に使わ...